ドイツ3日目〜小生、ラボ生活が始まる〜

朝から部屋に電話がかかってくる。ゲストハウスのオフィスのおばちゃん。英語の電話って今でも緊張する。そのあとに部屋が突然開いて、そうじのおばちゃん。毎朝クリーニングが入るそうな。まぁ部屋が散らからなくていいか。

メールで話してたおばちゃんは、優しいおばちゃん。いろいろ助けてくれそうな、大阪のおばちゃん inドイツ。

さぁ、一日の始まり。今日はラボに行くぞ。天候晴れ。気温良し。一気に期待感が膨らみ始めて、ゾクゾクする。というか、ラボに辿り付けるのかどうかが最大の壁。

まずは電車だ。切符の買い方が分からない。街のヒトに聞いても、明らかに英語が分かってない。「タダなの?」って聞いたら、「そうよ!」とか言うから安心してたら、見事に料金表発見。おいおい。しかも、説明も全てドイツ語。しばしば、外国人に何かを尋ねた日本人が、英語がわからずに「いえーす!いえーす!」と言って、外国人をイライラさせるというエピソードがあるが、気持ちが少し分かってしまった。結局、英語が多少しゃべれる大学生の助けを借りて、チケット販売機は電車の中にある事がわかった。

この国で生きるためには、手元にある僅かな情報を元に、仮説検証型で推測していく能力が必須。

いざ、S1ラインに乗って、発進!思った以上に通勤路がのどかな田園風景。こんなんで毎日通勤するの!?一日目は楽しいけれど、一ヶ月続いたらこころ折れそう。

遠すぎるでしょ!すでに森だよ!本当に僕の人生、毎日が冒険。

通り道で研究者に遭遇。もっといい方法があるそうだ。一日4本しかない直通電車。あまりに少ないから、アクセスガイドには載せてないらしい。あとは、KITの北キャンパスと南キャンパスを繋ぐ無料のシャトルバス。UCSFも複数キャンパスを繋ぐシャトルバスがあったのを思い出した。これは便利。

すごくくだらない事柄でも全然分からないし、全然通じない瞬間もあって、こころが少しずつ削られていくんだけれど、それが何とも心地いい。生きてる感じがする。

とりあえず、ラボメンバーと顔合わせ。グループは4人でPI1、テクニシャン1、ドクター1、学部生1。こういう小さいグループが、研究所の建物の中に数十個あって、お互いに助けながら生きている。試薬も共通で買っているし、顕微鏡も、ピペットマンですらも研究所が管理している。

スペース広い。一列まるまる自分用のスペース。

昼ごはんをラボのインド人の院生のサーチンと。すごくいいやつで、いろんなことを教えてくれるし、いろんなヒトに紹介してくれる。堀川さんがジョンがいたことで海外ラボの生活がすごく楽になったという話を実感。有難い限り。

KIT北キャンパスは原子力系の研究機関が固まってるから、敷地内に住む事も許されて無いそうな。今日、僕が歩いてきたことを知っているサーチンが、「敷地の周り、ジャングルだったでしょ?」と。ええ、そうでしたとも。そこで迷いましたとも。

昼御飯はKITの食堂で食べるなら、毎日日替わりの三食のメニューから選べる。ローストポークヴァイツェンビールソース仕立てを注文。ヨーロッパのいいところは、とにかく食事が美味しい事。

KITは現在、ヨーロッパ最大の小型魚類(主にゼブラフィッシュとメダカ)のストックセンターとして機能しているわけだが、その収容規模は筆舌に尽くしがたいものがある。およそ1000水槽を収容する部屋が一つの建物に8部屋ほど存在していて、その建物が3棟存在している。野生型系統の部屋、ENU変異体系統の部屋という様に用途別に分かれていて、各部屋には映画の名前が、各水槽ラックにはそのキャラクターの名前が付いている。あまりに多いので混乱しないようにとのこと。従って、指示としては、「○○変異体系統を【ロード・オブ・ザ・リング】の【ガンドルフ】に移動していおいてください」となる。いや、まじで。

温度感受性変異体のための18度のフィッシュルームの名前はディズニーの「アイス・エイジ」。

隣接してInjectionルームやら、水槽の自動洗浄器部屋などが立ち並ぶ。魚関係の研究者にとっては、かなりの理想的環境。ちなみに、Injectionは疲れるだろう、ということで、Injectionルームのとなりにリラクゼーションルーム。

夕方にサーチンと一緒に市内までKITシャトルで帰宅。シンプルな時刻表。市内で買い物をするときに役立つ店を教えてもらってから、夜に飲みに行く約束をして一端帰宅。スーパーでKostriberが6瓶で3.5ユーロという価格に衝撃を受けつつ、笑顔で購入。その瓶を開けるために、栓抜きを共通スペースに取りに行った時に事件が起こった。強風でバタンとしまる音。オートロックの自室。鍵は部屋の中。Officeは無人。はい、終了。マスターキーを持ってるメイドさんに来てもらって、開けてもらう。焦りました。

夜は、サーチンお勧めのメキシカンレストラン。オレンジマルガリータが8ユーロで少し高いなと思っていたら、突然、ウエイターが「ハッピープライスとサイコロ、どっちにするんだい?」と。ルールがわからず、ぽかーーーんとしていると、サーチンが仕掛けを教えてくれた。20時前に注文するとハッピープライスで半額の4ユーロになり、月曜日に注文すると「サイコロ」で出た目のユーロで飲め、そのどちらを選択するかを選ぶ事ができるとのこと。「面白いじゃないか!もちろん、サイコロで!」とばかりに振って、「2」の目が。2ユーロのオレンジマルガリータは味以上に美味しかった。