ドイツ4日目〜小生、いろいろ戸惑う〜

毎朝4時起きして、日本とスカイプディスカッションしてから、論文執筆。6時半に家を出てラボに行き、ラボを出るのが19時半というスケジュール。夜にはたっぷりビールを楽しむ時間が残る。

朝から長い散歩。うちからKIT南キャンパスのバス停までは歩いて20分。さすがにちょっと毎日の往復は長いので、自転車を買おう。自転車はトラムにもバスにも乗せられるので、ひたすら自転車と共に移動が可能。

自転車は中古市場がKITの中に出来ていて、掲示板に売りたいものの写真と価格、買ってから何年かという情報が並ぶ。自転車、バイク、車、家具なんでも。

こころの安定剤、スフィンクス人形を配置。なんかこの人形の顔を見てると癒されるようになってしまった。彼に、ちょっと明日を見つめさせてみたり。

ドイツ語のボキャブラリーや喋れる会話が少しずつ増えてきているのだが、なかなか困難も多い。少し喋ると、猛烈な勢いのドイツ語会話が降ってくる。こうなるともう無理で、結局英語で話す事に。本日、習得した文章は「コーヒー、一杯!持ち帰りで!」

事務が優秀。事務が出来る事は全て事務がしてくれるし、彼らも全員が自分の仕事部屋を持っているなど、待遇もかなり良い。ドイツの外国人局への登録、住居選び、健康保険登録(国のものも会社のものであっても)等も彼らの仕事。よくありがちな名前やら滞在先やらを、数枚も同じ事を書かねばならない書類等も全て向こうが記入しておいてくれ、僕はただサインのみ。


面白いのは、実験関係の面倒な講習会が無い事。ラボのボスやテクニシャンに教える責任が与えられているので、彼らの説明を聞き、彼らのサインをもらえば、即終了。全ての面倒な移籍手続きが半日で全て終わるなんて、日本では考えられない。

KITのエントランスパスカードを入手。ちょっと嬉しいよね。

昼御飯はビーフシュー的なスープ。美味しい。

KITでの初レクチャーを受ける。次世代シークエンサーについての院生向けの講義で、参加者は8名で常に質問可能。東大で何回か受けた次世代の講義は「何の種で、何の組織で走らせるか」という生物学的視点なのに対して、ここでは「どのような機械を作成するか、どのようなプログラミングで解析するか(or、現在Facultyとして、どのような機械を作っているか)」といった工学的視点なのが刺激的。生物のところではサンガー法から始まって退屈していたのだが、データベース構築に入ってからは話が急加速して衝撃を受けた。


ラボのボスとディスカッション。とにかく、ディスカッションが多い。研究戦略を10手先くらいまで話し合い、それぞれについて細かく詰めていく。どこでつまりうるのか、その回避方法はどれだけあるのか、どれくらいのタイムスパンでデータが出るのか等。「とりあえず、やってみて、データの出たとこ勝負で考える」という発想は微塵も無い。全て理詰めで無駄な事はしない。もちろん、このやり方は効率化とセレンディピティのシーソーが、だいぶ偏ってるわけなのだが、郷に入れば郷に従え、ここにいる間はこのやり方を必死で学んでみたい。

実験のやり方が何もかも違う。in situにしてもこんな方法あるのか…という目から鱗のやり方の連続。研究所全体での協力体制が尋常でないので、新しいやり方や効率的なやり方は、ラボを越えてどんどん共有されていき、更なる効率化を目指している。既に、研究所内ですら6チームのコラボレーションになる事が決定して、明日からは毎日彼らとディスカッションで方針を更に詰めていくそうだ。おそらく、日本での(重たさすら漂う)「コラボレーション」という感覚は彼らには無いのだろう。体だけでなくて、思考をドイツに慣れさせるのに数週間はかかりそう。

「隣のラボとの垣根より隣の学科との垣根の方が低くて、隣の学科との垣根より隣の大学との垣根の方が低くて、隣の大学との垣根より隣の国との垣根の方が低い」とは日本のコラボレーションへの意識を揶揄して、しばしば使われる表現だ。僕はこの姿勢に、日本人の「見栄文化」の悪いところが濃縮されているようで、とても嫌い。大学院時代に率先してコラボレーションワークを進めていた理由は、主には研究の前進だが、サブの目的としてこの意識に楔を打ちたかったというのがある。何か自分の努力で改善できるものがあるなら行動に移すべきだと思うし、何も行動に移すつもりがないなら感情ごと封印するべきだと思う。僕は変えたい。

帰りは、ちょっと疲れたので、20分の歩きをトラムで省略。トラムはなかなか快適で、動きもかわいい。都電の魅力みたいな?切符を買うのにも(買わないのにも?)、ちょっと慣れてきていい感じ。

夜は初日から愛用している出店で、ハーフチキンをテイクアウトして、ビールアカデミーへ。ほら、学びの徒として、いつでもアカデミらないといけませんし。本日は、自宅でKostriberの瓶を一本飲んだ後に、Andechs Bockの樽生へ。軽くロースト効いてて、アルコール度ほんのり高め。全部併せて、5ユーロほど。おいしゅうごうざいました。

21時だけど、今日も明るい。幸せ。