ドイツ7日目〜小生、やっと一週間を迎える〜

朝、6時に起床するも、全く動けないくらいに体が疲れていた。来週には実験を習い始めたり、様々な事が始まるので、今日までは少しダラダラペース。

ドイツ語に慣れてきた。正確に言うと、ドイツ語が分からない事に慣れてきた。

午前はITGのフライデーセミナー。各ラボの院生とポスドクが、だいたい30分の発表と30分の質疑で、毎回二人ずつ仕事セミナーをする。ここまでなら、まぁ日本でもありうるのだが、そのオーディエンスが違う。ITGの全ラボメンバーが参加。PIが20人以上、最前列に座って容赦無い質問を浴びせる。「計画の最終目標が見えない」「そこまで行くのに10年かかる、何年ドクターをやるつもりなんだ」などから始まり、専門的なところまで。ゼブラ、メダカ関係だけで10ラボ以上あるので、テクニカルな質問もかなりえぐい。久々にセミナーで発言できなかったことにショック。物怖じしてる僕は、僕ではない。来週は攻め込もう。

昼御飯はバーガー!昨日、キャサリンが「明日はバーガーよ!バーガーdayよ!」とテンション高くしていただけあって、バーガーコーナーは長蛇の列。ハンバーグが美味しいのです。ファイアーハウス的なバーガーで、トマト、キャベツ、オニオンは自由にお好みで入れられる。みんなバーガーに挟むという感覚は無くて、横に置いて合わせて食べていくといった模様。

食べながら、サーチンに面白い電車の定期のシステムを聞いた。ドイツには電車料金に二つのディスカウントシステムがあって、「どれだけ早くオンラインで予約するか」と「バーン(BAHN)カードを持っているか」が関与する。任意の電車は事前予約で安くなるそうで、フランクフルトからカールスルーエまでくる特急電車なども1週間前の予約で60%ほど安くなる。そして、面白いのはバーンカード。バーンカード25は、49ユーロで購入でき、これを買うと任意のチケットが25%オフになる。同様にバーンカード50、バーンカード75、バーンカード100が存在していて、数百ユーロする無敵のバーンカード100を持っていればドイツの電車は全てタダというわけ。大抵、みんな25を持っていて、それと事前予約を組み合わせて安く買うのだそうだ。なるほど。なんでも知ってる物知りサーチン。

突然、フェリックスが部屋にやって来て、「テル!来週はハイデルベルクセミナーをやってくれ!」と。ヨハンラボでセミナーと実験ディスカッション。「実験習う予定もあるけど、どうする?」と聞いたら、ヨハンとのディスカッションは全ての予定に優先するそうだ。「彼のラボは、メダカとゼブラで仕事をするために必要な全ての技術と設備があるベストラボだ」と。ヨハンは人間的にも科学者としても、皆から尊敬されていて、サーチンも「テルはヨハンと話した事あるかい?彼は本当に本当に頭の回転が早くて素晴らしい人間なんだ!」とのこと。

ここドイツにあるのは、日本的な「とりあえず手を動かし続けてデータを出す」という発想ではなく、「いかに無駄な失敗をしないか(実験レベルでも、戦略レベルでも)」なので、基本的にディスカッションは実験よりプライオリティが高く、ヨハンラボなら尚更といった感じだろうか。というわけで、水曜日のセミナー準備をしないと。

毎日新しい事ばかりで、日記が長くなっている。徐々に新しい事が少なくなってくるはずなので、日記の長さは短くなってゆくはずだ。つまりはある程度の量、日記を書いてそこにフィッティングする関数を立ててあげれば、最終的な日記の長さの収束値(三食の記述量に相当しそう)と、およそそこに至る(1週間ごとの分散値がそれを含むとでもするか)までの日数のpredictionは立てられるはず。そこまでは少なくとも、どこかで新規性のある毎日が待っているはず!

僕は「性」の研究者なので、たまには性的な事も書いておきたい。欧米に来て誰しもが気付くのが、女性の胸の大きさの差異だ。簡単に言うと圧倒的にアジアの人間より大きい。普通はこれは「生まれ持って」、つまりは遺伝子が違うからという話で片付けそうだが、敢えて「授乳期に飲んだ母乳量が、子供の将来の胸の大きさを決める」という後天性のフィードバック仮説を提唱してみよう。検証のための実験を帰りのトラムでずっと考えていたのだが、「ドイツ人の乳児を、日本人女性に育てさせる」という証明はエレガントでなくて、おそらく一番のベストコントロールは「日本とドイツのハーフのなかで、母親が日本人の女の子と、父親が日本人の女の子で、胸の大きさを比較する」だと思う。女性の胸の形のエレガントさよりも、その証明のエレガントさが気になってしまう職業病。

もう一つ疑問なのは、彼らの性に対する感覚だ。欧米女性は、日本人女性と比較して、上半身の露出度は圧倒的に高い一方、下半身に関しては圧倒的に日本人女性の方が緩い。昨日も隣のラボのアレックスとシャーニャと話していたときに「日本の女の子はスボンではなくスカートをはいて、いつも着飾っている」という話題になった。おそらく彼女らにとって、下半身こそが「ガード」であり(それは性的に襲われる可能性も含めて)、上半身はいわば「どうでもいい」ものなのかもしれない。しばしば、その差を全く意識できない日本人女性がトラブルに巻き込まれているが、確実に感覚は異なっている。こういう感覚の差はとても不思議なので、こちらに住んでいる間にもっと詰めて行きたい。あと、個人的にすごく気になっているのは「間接キス萌え」や「チラリズム」的な、密かな性的欲求という感覚を彼らは持っているのかというクエスチョン。

夕方、携帯を買おうか迷って、サターンというビックカメラのようなカメラ屋に。サムソンの3Sを買おうか、iPhone4S買おうか考え中。

夜御飯は無しで、いつものビールアカデミーに。ほぼ毎日、ここで一人で飲んでいて、「日本人にしてはやたら飲むから」だそうで、少しずつ認知されてきた。バーやパブはいいと思ったら、通い続けるのが店としてもこちらとしても吉だと思うのです。味の趣味も覚えてくれるしね。今日は大好きなPaulaner Hefeから始まり、Frankenheimer AltとPaulaner Exportの三杯(だいたい一杯350円)。一人で飲むのは悪くはなく、何かをしながら、ビールを楽しめる。今日はひたすら英語とドイツ語の勉強。それにしても、世の中に無駄な事は無いんだなと思う。駒場の頃、あんなに「どう考えても意味ないだろ!」と思ったドイツ語を今は必死に必要としているし、高校での世界史も同様。世の中に無駄な学問は無い。目の前にチャンスがあるならば、常に全力で行うべき(それが難しいのは承知だが…)で、どこかでその経験は血となり肉となる。

帰ろうと思ったとき、ドアの近くにいたドイツ人集団に呼び止められる。「最高のパブだろ?」というから、「こんないいパブは世界にどこにもないよ!」と言ったら、「うっしゃー!おごったる!」という謎イベント発生で、ハーフヴァイツェン500mlをもう一杯飲む事に!いろいろドイツ語を学べたし、少しずつ顔なじみと仲良くなってきたし、いいイベント。こういうの大好きです。

次来る時には、自分の奥さんと来たいという気持ちが高まる街。絶対、二人で来て毎日いろんな体験をして、いろんな楽しみや苦しみを味わったら最高に楽しい国、ドイツ。ヨーロッパって、そういう魅力があると思う。

やっとドイツ生活の初めの一週間が終わった。怒涛のような一週間。一年にも感じるような一週間。僕の求めるところのドキドキとワクワクが濃縮された一週間。来週のドイツはどんな顔を見せてくれるのだろう。