ドイツ13日目〜小生、ツール集めに奔走する〜

Twitterを見ているとどうやら日本は暑かったらしい。カールスルーエは本日最高気温27度、最低気温17度。朝、登校時はだいたい20度くらいで、湿度もほどよく快適です。

朝御飯は市内で買う時間がなかったので、生協で。ローストビーフとレタスのサンドイッチ!

午前はひたすらメールを打ちは返し、Felixとディスカッションをして終わった。ここKITはヨーロッパ最大の小型魚類のストックセンターだというのは以前にも書いたが、それもあって、ゼブラとメダカにおける技術と人間の流通が非常に良い。マックスプランクと打ち合わせするのも、EMBLやハイデルベルクと打ち合わせするのも、何かしらのコネクションがあり、かなり自由に動く事ができる。アメリカだとこれに相当するのは、よく知らないが、やはりゼブラフィッシュの故郷のオレゴン大なのだろうか?

ふとした瞬間に自分でも笑えてしまうのだが、小さい頃にメダカを飼ったり熱帯魚を飼って遊んでいたのが、何故だか大学院でメダカをやることになり、何故だかリアル「メダカ博士」になってしまい、挙げ句の果てに、日本から遠く離れたドイツという土地でなお、メダカと戯れている。そもそも、ガタイのいいゲルマン民族達が真剣に「めだぁかぁ!」とか言ってるのを冷静に見ると、なんだかとても不思議な気持ちになってしまうのだ。

これまでKITの良いところばかりを書いてきたが、実は不便なところもある。それは「ストックセンター」であるという最大の利点が関与している。(規模が大きい)→(病気に対して非常にセンシティブ)→(ラインの受け渡しが難しい)という問題。成魚の受け渡しはKITのFish houseの中でも完全に別れていて、ブリーチして完全に表在菌を殺した卵でしか持ち込んではいけない。その卵であっても、国外から持ち込む時には、クオリティチェックのための2枚のシートが必要で、ここKITが発行した正式書類が入っていない場合は、送られてきた時点で無惨にサンプルは捨てられる。卵でしか送れないということは、全ての作業が1世代分の3ヶ月遅れるということを意味していて、様々な予定を先読みして立てていく必要が今まで以上に求められる。

というわけで、ここ数日はひたすら3ヶ月後に必要な可能性があるラインを各所から取り寄せるために、メールを一日30通ペースで打ち続けているのだが、この時のお作法も日本と少し違っていて、今日はトラブルを起こしてしまった。少し特殊なラインがほしくて、さらにそのラボに技術習得に行きたかったので、軽くこちらの目的を説明して、「コラボレート(共同研究)したい」と送ったら、これがNG。丁寧なメールのあとに、「申し訳ないが、僕は今直近で君の興味がある研究をできる状況にない」との返答。メールのCcで入っていたFelixが数分後に僕のところにやってきて、「共同研究は良く無い。日本と違うかもしれないけれど、ここでの共同研究は、お互いが責任を持ち合う事で、彼がOKと言うということは、彼も何かの結果を出す事を要求されるということなんだ。ただ、ラインが欲しい、技術をちょっと教えてくれと頼んだら、必ず彼はOKするよ!」と。なるほど、これは日本の真逆。日本ではある一定以上の技術習得や協力を援助してもらうためには、「共同研究」という形を取り、論文も共同でPublishし、ある種GIve&Takeな関係を築く。「共同研究」や「論文」という物に対する、日本とドイツの考え方の差を強く体感した。

今日は昼に、中古自転車を買う約束をしていた。KIT掲示板で良さそうな中古自転車が50ユーロで出ていたから、持ち主に電話をしていたのだ。それが行ってみたらびっくり。自転車がすごく小さい。持ち主の恰幅のいいおじさん(おっさん)が立っていて、「息子用か?それともまさか、ボーイフレンド用か?(意外とドイツはゲイが多い)」と聞いてくる。こんなはずでは…と思っていたら、「まさか、おまえ用か?子供用って書いておいたじゃねーか!おーまいごっ!(写真のjugendfahrrad=youth bicycle)」…。ごめんなさい、ドイツ語読めませんでした。。。「くそ、ここまで持ってくる手間とらせやがって!」おじさん(おっさん)は怒って去っていった。ごめんなさい。

二階食堂にいいメニューがなかったので、今日は一階食堂で、ソーセージ&ポテト。

昼過ぎには、外部からヒトを呼んでのセミナー。ゼブラの行動のヒトで分野が近いこともあって、かなり面白い。というか、正直、少しかぶっている所もあったので、面白いを通り越して、ヒヤヒヤしながら聞いた。この2週間の間に外部から呼ばれてきた研究者のセミナーを3人聞いたが、全員zebrafishでどれもかなり質が高くいいサイエンス。本当に小型魚類の知識や技術をKITに集めようという意識がとても高いのに何度も感心させられる。僕が東大時代に作ろうとしていた、小型魚類を研究するための「システマティックな解析ツール」という概念も、極めて強くKITでは根付いていて、何かをしようと思った時に苦労せずにゴールまで行けるようなルートが何本も確保されているのが素晴らしい。

セミナーで高宮さんに再びお会いしたので、コンストラクト作りの相談に乗ってもらった。本当にいい方で、研究やドイツ生活のことまで様々な事を教えて頂いた。となりのラボのウィルコーも「マサは本当に素晴らしいヒトで…」と何回も繰り返していたが納得する。右も左も分からない僕だったが、右の第一画目を踏み出した気分になれるディスカッションだった。どうにか前に進めそう。

実験に関して、ドイツ人は本当に細かいし、恐ろしく実直。日本人はアメリカ人に比べれば圧倒的に実直型だと思うが、ドイツ人のそれは更に上を行く気がする。日本人を「3段飛ばしで階段を駆け上がり、たまに転んで時間を無駄にする事がある」と例えるならば、ドイツ人は「ただただ、ゆっくり1段ずつ確実に上がって行く」が正しい。無駄なく、ゆっくり、でも確実に。電気泳動一つとっても、ゲルの保存なんてしないそうで、像が汚くなるから、と。

帰り道の途中で、前から目を付けていた店で「ハンバーガーwithオニオン」を買ってきた。ハンバーガーの厚さ3cm!オニオンもワイン蒸しかな?すごく美味しい!夜は食べないつもりだったのだが、つい食べてしまったので、今日はお酒は抜き。