ドイツ14日目〜小生、日本とドイツの大学組織の差を体感する〜

朝。快晴。やや肌寒い。街行くヒトには未だ長袖もチラホラ。

今朝は街でイワシのマリネサンド的なものを食べる。こちらに来てから初めての生魚。日本ほどではないが、まともに美味しい。昼にキャサリンに聞いたら、ドイツは鮮魚の流通は結構良いそうで、北海で取れた魚が夜の間に南の方に来ているから、こうして街で生で出している魚はどれも鮮度が良いそうだ。なるほど。

午前、仕事をしていたら、サーチンが「アニバーサリーだ!てる行こうぜっ!」と。なんじゃなんじゃ、アニバーサリーとはと思っていたら、どうやら半年に一回、KITの中の僕のいるITG(毒物遺伝学研究所)の集会があって、研究者だけでなく、スタッフ、テクニシャン、事務、清掃員までも一同に集まる集会があるのである。研究所のなかでの危険物取り扱いについての講習が無く研究がスタートしたと思ったら、どうやらこのアニバーサリーがそれにあたるようで出席を取られ、簡単な放射線のレクチャーを受けた。ちなみに、本日のお題は「フクシマ」でした…。

そのあとは、ディレクターのUweのお話。ITGセクションの新しい建物がもう一つできるという事と、「新しいディレクターとして、Steffenを就任させようと思うがどうか」というものだった。これがなかなか興味深い。一応、選挙の形態を取らないといけないので、彼を選んだ経緯や彼がどのような利点を我々にもたらしうるかの説明があり、その後Steffen退場。その後はinternalな質疑が行われる。多くはPI達からUweに対して行われるが、例えば「今後のITGとしての方向性について変化はあるか(Steffenはケミストなので)」という質問が浴びせられる。日本における学科の専攻長は持ち回りの名誉職的なものだが、こちらでは彼の意見が研究所全体に強く反映されるので、周りのPI達も必死である。「レヴューなどについて変化はあるか」なども含めて、日本ならば陰で行われそうな討論はポスドク、博士、修士、事務員の前で公然と議論される。その後、挙手で、賛成と反対の票が数えられる。ここもまた不思議でほとんどの人間が賛成に手を挙げる中、僕の真横に座っていたヒトが突然反対に挙手。「なんで?彼の事嫌いなの?」と聞くと、「いや、そうではないが、僕は彼の事を良く知らないし、Uweの説明は不十分だったから未確認な部分が多すぎる、君はなんで賛成なんだい?」と。日本における「長いものに巻かれろ精神」は無く、全員に意見が求められる。

さらに、その後は博士の院生会長の選挙。東大の僕のいた学科の院生会長は「飲み会係」と「セミナー係」的なものなので、そんなもんかと思っていたら、とんでもない。こちらでは院生会長はPI meeting(要するに教授会)に出席して、発言権が与えられているのだそうだ。日本では博士は単なる学生であるが、こちらでは人数が少ない事もあってか、きちんと彼らの意見を抽出し、反映させる場が与えられているのも興味深い。

昼ご飯は、ピザ。またサーチンの「今日はこれで決まりだぜっ!」についつい乗ってしまったのだが、今度は美味しかった。ただね、ものすっごい量が多いのです。食べきれず。ちなみに、KITはサラダバーも充実していて、野菜不足の場合には充分ミネラルを取れるように用意されている。

毎日、昼ご飯を食べている生協の2階食堂は周囲が全て緑に囲まれていて、開放感もあり、なかなか落ち着ける場所だ。

午後は実験。先日から何回も書いているが、何も分からない。試薬や機械やアイスボックスの場所、機械の使い方から始まり、ドイツのルール、KITのルールまで全てが分からない。例えば、P200とP20は日本では同じチップだったのだが、ドイツでは別れている等、様々な困難が一つ一つの実験を阻む。僕は4年生からマスターに上がる時にラボを変えたのだが、それとは意味が違う。さすがにポスドクともなると、基本的な実験は「全て出来る」わけだが、本当に「全くできなくなる」のである。このストレスはかなり激しい。とりあえず、今日は基本の基本、PCRを学んだ。

PCRの試薬もベースで動いているのはExTaqでもKODでもなく、FermentasのDream Taq。これまで聞いた事も無かったが、まずバッファーが緑色。PCR反応を阻害しないLoading Dyeだそうで、反応後そのまま電気泳動が可能とのこと。なるほど。僕はいちいち発見の連続なのだが、そのリアクションを楽しんでいるサーチンが、僕が何かを新発見した時の独り言を真似し始めた。「そーなんだー」と「へえー」と「なるほど」が彼のお気に入り。

ノートも面白い。学生は各紙に全てカーボンシートが張られてるプロトコルを使っている。出て行く時には、全てサクサク抜いて行けば、プロトコルが2冊になる仕組み。ちなみに、僕のプロトコルは電子自炊の結果pdfファイルとなっているので、全世界に簡便に持ち歩ける。

夜は、昨日、ハンバーガーが美味しかったので、そこの店の新たな肉に目を付けた!この肉厚サンドイッチwithワイン蒸しオニオン、激ウマです。生ビールと合わせて、帰りの一杯。ビールを飲んでいる(というか、飲まれている)お爺さんと、その奥さんが、こちらが日本人だと知ると、いろいろ話かけてきてくれて、やはりドイツは親日な国だなと実感。

ちなみに、カイザーストリートにはもっと魅力的なお店がいっぱいあって、今目をつけているのは、このチョコレート屋さん。

昨日、赤ワインを買ってきたのだが、コルク抜きが無く挫折したので、スーパーにコルク抜きを買いに行く事にした。街のスーパーレベルでもビールの揃え、ワインの揃えは極めて充実している。これはビールコーナーの写真。

あと、チーズと肉の揃えも。ブログで紹介したチーズコーナーと、肉コーナーは隣り合っていて、ソーセージやよくわからない肉塊がゴロゴロと並んでいる。生で食べられるかがかなり分からないので、安全なチーズコーナーへ。柏木さんの指令通りハードチーズを買おうとしたが、どれがハードが分からない。直前まで肉を買っていた親切なおっさん(ただ、明らかに既に酔っぱらってる)が、「へえい、チーズが欲しいのかぃ?どんなの食いたいか言ってみな、通訳してやっから」と。「これは有り難い、ハードチーズを所望しておる、よこせ!」と答えると、「ふぉふぉふぉ、おまえさん、もうちょっと美味そうなの、俺が見繕ってやるよ!いいのはこれと、これと、これだな!どれが美味そうだぁ〜?」と。え、、、じゃあ、これで…。「良い買い物したな!ワインを楽しめよっ!」親切な酔っぱらいおじさんは去って行った。Appenzeller classicというチーズとTorten Brieというチーズ。まぁどれも100gで100円か200円レベルなので、気になったら買うという戦略が正しい。

というわけで、ワインコーナーへ。このスーパーのワインコーナーも、はちゃめちゃに安い。どれもだいたい1ボトルで400円くらい。よーし、お父さん、今日は奮発しちゃおうかなっとばかりに、少しお高めなワインに手を出す。1200円。Les Granges des donaines edmond de Rothschild 2008。全然よくわからないのだが、「ラベルのところにHaut-Medocって書いてあるからフランスのオーメドックのやつだろう、そして、きっとロスチャイルド家(Rothschild)が関わってるから美味しそう!」家に帰ってみて開けてびっくり。こいつはかなりイケる。今日買ってきたチーズと合わせて満足であります。

成瀬仁蔵先生の誕生日6月23日にドイツに渡って以来、やっと2週間が経過した。キキの気分そのものだ。「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。